ある小学校の研究授業視察から

親の世代に足りない「思考」の横への広がり

少し前になりますが、
実は先月、東京都下の某公立小学校の研究授業
を視察させていただく機会に恵まれました。

ハンセン病を題材とした人権について学ぶ
シリーズ物の研究授業のうちの一コマで
私が見学させていただいたのは、ラッキーなことに
療養所住まいの元患者の方に直に話を聞こう!
という回でした。

私自身、身近にいなかったからとはいえ
「知らなかった」で済ますには
あまりにも重い現実
がそこにありました。

児童たちは、既に何回か授業を経ているだけに、
ハンセン病に関する知識や理解も相当深まっており
ゲスト(元患者の方)への質問コーナーで
我先にと沢山の手があがっていたのが驚きでした。

私自身の学生時代の経験でも
社員研修や一般のセミナーでも
こんなに活発に手があがる場面は初めてだったかもしれません。

先生と児童たちの間に信頼関係ができている、
まさに「心理的安全性」が担保されている場だと感じました。

私は児童教育は門外漢ですが
日頃、企業/大人向けの学びを提供している身として

ゲストで来られていたハンセン病市民学会の方が
「ハンセン病『を』学ぶ、ではなくて
 ハンセン病『から』ほかの人権課題へ」

と繰り返し仰っていたのが印象的でした。

小学校の授業は45分間。
私はこの1回のみの視察なので、
他の回でどのような取り組み方をしているのかわかりませんが
確かに「◯◯を学ぶ」という一点深堀型では
実は効果的な学びを得るには不十分だと感じています。

社会の動向や、多くの経営者のご相談内容からも明らかなように
今の大人社会に圧倒的に欠けているもの「思考力」だと言えます。

その「思考力」を養うには、思考を横に広げていく必要があります。

あの授業も十分素晴らしかったのですが
私ならばさらに

・ハンセン病の人権侵害と似たような構造が身近にないか?
・コロナ差別との類似点は?
・差別する側の気持ち、差別される側の気持ちは?
・差別された人やその家族にどんな影響があるか?
・差別した側は、どんな理由でそのようなことをしたと思うか?
・他にどのような選択肢があったと思うか?
・自分ならばどうするか?
・過ちを繰り返さないためにはどうしたらよいか?

…というようなことについて
皆で討議する場を持ちたいところです。

一点集中で深堀りすることは、
その問題そのものに対する知識は深まりますが
それでは「知った」だけ、つまり
「脳の中の本棚に新たな知識本が増えた」にすぎません。

脳は、
新たに知ったことを「既に持っている知識や経験」
とつなげて考えて初めて本当に理解した
と言えるからです。

何か新しいことを学んだら
常に「他のジャンルでも似たような構造は…?」「身近では…?」
とアンテナを広げることこそが大切なのです。

このような実験的なことを積極的に行っている小学校がある!
ということ自体に「未来への希望」を感じました。
このような取り組みを、ぜひ広げていっていただきたいものです。

今回の視察を通して、
企業、社会の持続的な発展のためには
教育者たちが「今の現役世代に欠けているもの」を知り
それを乗り越える力を養うためにどうすればよいか、
を考えて現場に活かしていく必要がある…そう感じました。

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